ひとたびはポプラに臥す〈4〉 (講談社文庫)



ひとたびはポプラに臥す〈4〉 (講談社文庫)
ひとたびはポプラに臥す〈4〉 (講談社文庫)

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虚しさという結論

著者が、仏教経典の翻訳者であった鳩摩羅什という人物がかつて旅した足跡をそのまま辿った旅行記。

著者は関西人らしく、会話のはしばしにユーモアがちりばめられていて、面白く読める。また、旅の途上で宮本輝が何を考え、何を見たかがストレートに伝わってきて、興味深い。

ただ、1ヶ所、気になる部分があった。著者は、自分が作り出す物語に自分の解釈や説明や理由付けを行ってはならないと書いている。しかし、自分の解釈がない小説など、毒にも薬にもならない。そんな小説に心が動かされるはずはない。小説とは、人生や社会、事件などへの意見、批判、または問題提起となるべきだと私は考える。何らかのメッセージがこめられていない小説など、存在価値がないと思うのである。宮本輝がなぜそんなことをいったのかは分からないが、私の小説観とは意見が異なるようである。

波乱に満ちた旅の最後に、著者はずっと持ち続けていた感情を自覚する。「虚しさ」である。この言葉がすべてを物語っているように思われる。古代の王、ソロモンは言った。「空の空、すべては空」。何を成し遂げようとも、どんなに富があろうとも、結局はすべてが虚しいとこの王は言ったのである。著者が期せずして同じ結論にたどりついたのも、ソロモンの言葉の正しさを表しているのではないだろうか。
ウイグルよりも遠き場所

鳩摩羅什の生地クチャ。そこは同じ中国とはいえ、異卿ウイグルの土地である。
民族言語習慣のすべてが異なるウイグルで、少数派の漢民族が権力を持っている。
まさしく辺境といえるだろうが、閉ざされたかのような街もかつてはシルクロードで東西の文化に触れ、入り混じったはずの土地である。
いかに近代のグローバル化という名の画一化が広がっているかを感じさせられた。

旅も難所をぬけて後半にさしかかったという余裕からかもしくは漢民族への反発からか、筆者はウイグル族には許容の精神を示しているようだ。
しかしクチャで、羅什について感じることは少なかったようだ。
イメージと違うというのが最大の理由らしい。もしくは気分が乗らなかったか。
その分自分の過去や感じたことを熱心に書いている。
しかしそれを読んで浮かんだのは、なぜそう思うのか、という疑問だった。
それを感じさせるだけの自己表現力があるからこそなのだろうが、個人差なのか年代の差なのか。
精神的な溝に隔てられた思考は、ウイグルよりも遠い。




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